カムカムエブリバディが好きすぎて。心に留めておきたい言葉のふりかえり。
NHKの連続テレビ小説『カムカムエブリバディ』。3人のヒロインによる100年の物語が、4月8日に最終回を迎えました。
愛すべきキャラクターたちや、彼らの人間模様、歴史的背景、物語のスピード感、見事な伏線回収の仕掛けなど、最後まで魅了されっぱなしでした。作り手の皆さんの愛をとても感じた作品でした。
今回は、筆者が好きで好きでしょうがない『カムカムエブリバディ』の中で出てきた、心に留めておきたい言葉や振る舞いをふりかえっていきたいと思います。
エンタメとして楽しくて、心にすーっと染み入る、素敵な物語です。ご覧になっていない方にも、何か響くものがあるのではと思います。
スポンサーリンク
努力を続ける力になる言葉 by 伴虚無蔵
三人目のヒロインの大月ひなたが働く映画村にいる、伝説の大部屋俳優の伴虚無蔵(松重豊さん)。普段から侍言葉で話し、服は着流し姿、ひなたのバイト時代の給料は紐でまとめた五円玉で渡す、という風変りで愛すべき人物です。うろ覚えなのですが、オーディションのことを「御前芸比べ」みたいに言っており、それを聞いていて思わず吹き出してしまいました。
そんな虚無蔵さん、ひなたが映画村でバイトをするきっかけをくれたり、就職してからも何かとひなたのことを気にかけていました。
ひなたが映画村で外国人のお客さんのためにとくじけそうになりながらも英語の勉強をしているときに、その様子を見た虚無蔵さんがひなたにかけていた言葉があります。次の言葉です。
「日々鍛錬し、いつくるともわからぬ機会に備えよ。」
ひなたの恋人の五十嵐が時代劇俳優の夢をあきらめたときには、虚無蔵さんは五十嵐にこんな言葉をかけていました。
「どこで何をして生きようと、お前が鍛錬し、培い、身につけたものはお前のもの。一生の宝とせよ。」
勉強でも仕事でも生活してても、時折これでいいのか、立ち止まってしまうことがあります。結局何にもならないのではないか、と。
でも、こうして身につけたものは、誰のものでもない、自分のもの。いつ機会がくるかはわからないけれど、そのときがきたときに発揮できるように、こつこつ続けて積み重ねていこう。そんな風に背中を押してくれるような思いになりました。
そして、長年が経ち、ひなたがラジオ講座で英語を教える仕事のオファーがあって悩んでいるときに、再会した虚無蔵さんがひなたにかけた言葉があります。こちらの言葉は公式Instagramに載っていましたので、以下に引用します。
そなたが鍛錬し、培い、身につけたものはそなたのもの。一生の宝となる物。されどその宝は、分かち与えるほどに輝きが増すものと心得よ。
(参考元:カムカムエブリバディ公式Instagram asadora_bk_nhk(一部抜粋))
虚無蔵さん、ひなたが若いときには努力の大切さを伝え、ひなたが成長したときにはそのときにできることを的確に伝えて、いつの時代にもひなたの背中を押していました。見た目や振る舞いだけでなく、心まで侍のようです。人生の師ですね。
その後、ひなたはラジオ講座で英語を教えるようになり、その仕事の場で初恋の相手と再会する運びとなりました。
演じているのは松重豊さんです。『孤独のグルメ』でも、いろんな食べ物を食べては静かに様々な表情をしながら心の内側であれこれ言う、とても味のある演技をされていましたね。伴虚無蔵役、見事でした。
しなやかに生きるということ by 大月錠一郎
戦争孤児の元トランぺッターの錠一郎。彼の穏やかにしなやかな生きる姿には、心打たれるものがありました。
二代目ヒロインのるいとは大阪のジャズ喫茶で出会い、恋に落ちます。関西のトランぺッターナンバーワンを決めるイベントで優勝し、上京してプロデビューを目指して練習していましたが、どうしてもトランペットが吹けなくなるという謎の病に襲われます。
トランペットが吹けなくなった錠一郎は、るいとつないでいるものが何も無くなったと思いつめ、彼女の目の前から消えようとします。るいは、そんな錠一郎に対し「ひなたの道を歩いて行きたい」と、暗闇の中から連れ戻します。
そしてるいと錠一郎は結婚し、京都で回転焼き屋さんを始めます。ところが、音楽しかやってこなかった錠一郎には回転焼き屋さんの仕事はできず、粉をぶちまけたり、大勢のお客さんに対応できなかったり。家庭人として、二人の子ども(ひなた、桃太郎)の遊びに付き合ったり、野球の見守りをしたりして過ごしていました。浮世離れしたヒッピーのような見た目で、子どもや奥さんや周囲の人に優しく笑顔をふりまく、いいお父ちゃんになっていました。
ある日、長男の桃太郎が失恋で自暴自棄になり、近所のお店からCDプレイヤーを盗みます。それを知った姉のひなたは弟を問い詰めます。次第に兄弟喧嘩がヒートアップ。
そんなときにトランペットを持った錠一郎が現れます。子どもたちは「なんの冗談?」と半分笑って見ています。錠一郎は、自身がかつてトランぺッターでかつてプロを目指していたこと、トランペットが吹けなくなってしまったことを子どもたちに初めて伝えます。
そしてその話の後に、一言。
「それでも人生は続いて行くんだ。」
錠一郎は戦争孤児で、唯一の救いであった音楽ができなくなり、るいとも一緒にいられないと絶望していました。ですが、るいと結婚し、子どもたちが誕生し、すっかりいいお父ちゃんになっていました。
絶望を経験し、その状況を受け入れ、しなやかに生き続けること。自然体で温かい錠一郎の根底には、荒波を乗り越えた強さがあります。痛みがわかるからこそ、人に優しくなれる。錠一郎のふるまいや言葉に、どんな状況でも歩き続ける力を感じました。
その後の錠一郎はピアニストに転身し、親友のトランぺッター・トミー北沢のバンドに参加して、再び音楽の道に返り咲きました。よかったね、ジョーさん。
ちなみに、大月錠一郎役はオダギリジョーさんです。トランぺッターのかっこよさ、生きる術に疎い愛らしい姿、優しさ溢れるまなざし。とても素敵でした。
本質的な幸せとは by 大月るい
二代目ヒロインの大月るい。彼女からは、本当の幸せとは何か、ということを考えさせられました。
幼いころは初代ヒロインである母・安子と大阪で暮らしていました。父・稔を戦争で亡くし、母娘でおはぎを売りながら貧しいながらも幸せに過ごしていました。
ある日、リアカーに幼いるいを乗せたまま歩いていたところ、事故に遭い、るいは額に大けがをしてしまいます。その事故を知ったるいの父方の祖父は、安子に一緒に生活することを提案します。その義実家は岡山にある大手繊維メーカーを経営しており、豪邸で何不自由なく過ごせます。結局その義実家で、母・安子、娘・るい共に生活することになりました。
経済的には何不自由ないものの、安子は義実家から、他の人と再婚し、るいだけ岡山の家に残すことを提案されます。安子は拒否していましたが、不運が積み重なり、安子はるいと一緒に過ごせないと絶望し、娘・るいだけを義実家に残して母・安子は家をでていってしまいました。母娘が生き別れになりました。
大人になり、錠一郎と結婚したるいは、京都で回転焼き屋さんを始めます。昔、母親と一緒に作っていたあんこの味を覚えていたのです。
巷では『およげたいやきくん』の歌が流行っていた頃、たいやき人気により回転焼きの売り上げが落ちて悩んでいました。そんな折、るいの親友で茶道の師範である一子が回転焼き屋さんを訪れ、るいの回転焼きを試食します。そして、このあんこの味なら本格的な和菓子作りでもしてお店を大きくすればいいのに、と話します。
そのときにるいが思っていたことは、あまりお店を大きくしたくない、とのことでした。今自分で作りあげた家庭があり、つつましく生きられることの幸せをとても実感していました。るいにとっては、幼少期の貧しく質素ながらも母娘で過ごせた時間が幸せな時間だったのでしょう。
幸せの尺度は人によって異なります。自分にとっての幸せとは何かを知ること。そして、過不足なく幸せであれば、あとはそれをひたすら守っていく。
るいの姿に、静かな強さを感じました。
大月るい役は深津絵里さんです。ファッションやヘアスタイルの変化もよかったですね。若い時代のるいの初々しい様子、結婚後の徐々にたくましくなっていく様子、終始奥に秘められていた芯の強さ、とても惹きこまれました。素敵でした。
カムカムエブリバディ総集編がGWにあります【終了しました】
心に残る名作、カムカムエブリバディ。なんと、公式Instagramより、総集編のお知らせがありました!
放送日
<BS4K>
2022年5月1日(日)午後1時30分~4時20分(全国)
<総合>
2022年5月4日(水・祝)午後2時~4時59分(全国)
(参考元:カムカムエブリバディ公式Instagram asadora_bk_nhk (一部抜粋))
筆者はビデオ録画して、永久保存版にします!当日は、回転焼きと抹茶をおやつにしようかな。
◇◇◇◇◇
今回は、筆者が大好きなNHKの朝ドラ『カムカムエブリバディ』で出てきた、素敵な言葉やふるまいのふりかえりでした。
こんな素敵なドラマを作ってくださり、キャストの皆様、スタッフの皆様、音楽に携わった皆様、脚本家の藤本有紀さん、本当にありがとうございました。
こうやって文章を書いているだけで、ほっこりしています。